出資持分の払い出しについて、説明してください。

このたび、医療法人を退職することになった。その際において、医療法人設立当初の出
資額100万円に対して、1000万円の払い戻しを受けることになった。
 払戻しになるため、特に申告を行わなかったが、後から、税理士に「所得の発生になりますので、必ず申告が必要になってきますよ。」と指摘を受けてしまった。

<失敗のポイント>
 出資額100万円に対して、1000万円の払い戻しを受けたのであれば、所得が発生することになる。
 所得発生の場合については、必ず申告しなければならない。

<正しい対応>
(1) このケースの場合において、法人設立時に100万円の出資をし、その後1000万円の払い戻しを受けたということは、時価評価が1000万円であったということになる。この場合については、1000万円の払戻金から最初に出資した金額の100万円を引いた金額が配当所得になる。
つまり、この場合だと900万円が配当所得になる。
(2) 所得税における総合課税の対象に、配当所得はある。したがって、給与所得等の他の所得と合算することにして、所得税、住民税が課税されることになる。

<税法等の解説>
出資持分の払い戻し
(1) 出資者が退職する場合については、出資持分が時価評価額で払い戻しされることになる。
(2) 払い戻された金額が、設立当初の出資金額を上回る場合においては、差額金額は配当所得とみなされることになり、課税の対象となる。

○ 出資持分の払い戻し請求
厚生労働省が公表しているモデル定款によりますと、持分の定めのある医療法人に限っ
て、出資社員が退社する場合においては、その出資額に応じて、出資持分の返還の請求が可能となることになっている。出資持分を払い戻す場合においては、「時価」が基準となる。その場合の「時価」は、「相続税評価額」や「売買実例価額」などももとに計算するのが一般的なものとなる。ただし、定款において、払戻価額は出資額を限度とするなど具体的な定めがある場合については、定款の定めが優先されることになる。

○ 出資持分の払戻請求にともなう配当所得課税
退社した場合においては、その払戻金額は、設立当初に出資した金額がそのまま戻って
くるわけではないのだが、退社時点で医療法人全体の出資持分を時価評価した上で払い戻されることになる。
 例えば、法人設立時に100万円の出資をして、出資持分の時価評価が1000万円であった場合については、以下の金額が配当所得となる。

退社にともなう払戻金額(1000万円)—設立当初の出資金額(100万円)=配当所得(900万円)

 配当所得は、所得税における総合課税の対象となるため、給与所得等の他の所得と合算して、所得税・住民税が課税されることになり、最高50パーセントの超過累進課税が適用されることになる。

○ 出資限度法人とは
医療法人の収益が高く、保有する資産の含み益が多くなったり、過去からの剰余金の蓄
積が増えることについては、好ましいことのように思われるかもしれないが、退社する社員へ払い戻さなければならない出資金のことを考えてみると、一般的な時価評価に従って払い戻し以外の方法も、検討しておく必要があると考えられる。
 例えば、医療法人の設立時に1口1万円で出資された持分が、含み益や剰余金が蓄積されることにより、実際に支払った出資額によって出資額限度法人であれば、払い戻し時については、社員が死亡した際の社員持分の相続税評価額の時価評価といった煩わしい作業からも解放されることになる。

○ 出資額限度法人の問題点
出資額限度法人にも問題点がないとはいえない。例えば、一般の医療法人の大半は、同
族社員で運営されている。同族会社の扱いを受ける医療法人が定款を変更して出資額限度法人に移行した後、法人税法上において、社員が退社した場合について、払い込んだ出資金の範囲内の払戻金に対しては課税はなく、医療法人側にも受贈益課税は課されることはない。ただし、社員の死亡により、相続人が出資および社員としても地位を相続した場合については、他の同族社員へのみなし贈与として課税対象となりますので、注意が必要となる。

<税理士からのPOINT!>
 出資持分のある医療法人の場合において、出資社員の退社によって多額の払い戻しが必要になり、経営の圧迫につながることもある。