個人所有不動産の購入について、説明してください。

個人で所有する、時価1億円の土地を、私が理事長を務める医療法人に譲渡することに
しました。この土地は、近年急に高騰しており、時価で取引すると私への課税が高額になることもあるため、それを避けるため、4000万円で譲渡することにした。
 これを税理士に報告したところ、
・ 時価と著しくかけ離れた譲渡であること。
・ 医療法人と理事長の取引であること。
の2点において、注意が必要だと指摘されてしまった。

<失敗のポイント>
(1) 「土地を時価より安く売る分については、私個人が得をするわけではないのでいいだろう」と短絡的に考えてしまった。
(2) 医療法人と理事長の取引は利益相反取引に当たり手続きが必要だということを知らなかった。

<正しい対応>
(1) 利益相反する行為(契約)を行う場合については、理事長には医療法人を代表する権限がなく、医療法人側に「特別代理人」を立てる必要があるだろう。
(2) 時価の1/2未満の取引を行ってしまうと、結果として理事長個人にも医療法人にも通常の取引価額で課税される可能性が存在している。税理士等の専門家に相談して、適正な譲渡金額を算出する必要があるだろう。

<税法等の解説>
利益相反取引
 利益相反取引を行う場合は、正しい手続きと適正な取引に十分留意する必要があるだろう。

○ 利益相反取引に該当する行為
(1) 理事長が自己または第三者のために医療法人と取引をしようとする場合。
(2) 医療法人が理事長の債務を保証すること、その他理事長以外の者との間において医療法人とその理事等との利益が相反する取引をしようとする場合。

○ 直接取引による利益相反取引の例
(1) 法人から理事長へ行われる贈与。
(2) 理事長からの利息が付いた法人への金銭貸付。
(3) 法人から理事長へ行われる債務免除。
(4) 理事長が受取人となる法人からの約束手形の振り出し。
(5) 理事長と法人間で行われる売買契約。

○ 間接取引による利益相反取引の例
(1) 理事長が第三者間とする債務を引き受ける契約。
(2) 理事長と第三者間の債務を法人が保証する契約。

○ 留意事項
相反取引を行う場合は、以下のいずれかの手続をとる必要があると考えられる。

(1) 定款・寄附行為で、理事長個人と法人の利益相反取引について、法人を代表する者を定めておく。
(2) 社員総会で取引について承認を得る(社団法人)。
(3) 都道府県知事に特別代理人の選任を求め、特別代理人が法人を代表して契約を締結する。

 ただし、理事長と法人の間の取引であっても、法人の財産に損失を与える可能性のない取引なのであれば、このような手続きを履行する必要はないと考えられている。例えば、理事長が法人に財産を寄附する、といったような取引などになる。

○ 理事長の個人所有不動産を医療法人が購入する具体例
理事長が所有する土地(時価1億円)を、次の価格で医療法人に譲渡した場合の理事長
及び医療法人の課税関係は、

たとえば、8000万円(相続税評価額)で譲渡した場合については、
(1) 理事長に対する課税
 理事長が医療法人に対して時価の1/2以上で譲渡しているので、相続税財産評価額8000万円で譲渡したものとして税金が計算されることになる。
(2) 医療法人に対する課税
 医療法人が受け入れた土地の時価1億円と、実際の受入価8000万円との差額2000万円が医療法人の受贈益となり、法人税が課税されることになる。

たとえば、4000万円で譲渡した場合については、
(1) 理事長に対する課税
 理事長が医療法人に対して時価の1/2未満で譲渡しているので、時価の1億円で譲渡があったものとして税金が計算されることになる。
(2) 医療法人に対する課税
 医療法人が時価より低い4000万円で資産を受け入れているので、時価1億円との差額6000万円は、医療法人の受贈益となり法人税が課税されることになる。

<税理士からのPOINT!>
 理事長・理事と医療法人との取引は利益相反取引の問題と課税の問題が発生することがありますので、注意が必要となるだろう。